第二章 フルレンジスピーカーのための真空管アンプの設計と製作、その6

引き続き、配線材のお話です。

ヴィンテージワイヤーをラインアンプの信号ラインに使用して、好感が持てた線材を幾つか
ご紹介します。
信号ラインの受け側のインピーダンスは100KΩですので、このインピーダンスが変われば、
結果もまた異なることが予想されますので、あくまで参考とお考え下さい。

1. WE 24GA 錫メッキ-シルク 1940年代
WEのヴィンテージワイヤーは、実に多くの種類があるようですが、当然ながら種類によって
音も変化します。
今回のテストで、今のところ最もバランスがよく好感が持てるのがこのワイヤーです。
一番の特徴は、音をしっかり抑えて地に足を付けた風格です。 オーケストラは安定し、
ボリュームを上げても破綻することがありません。また、ボーカルなども前に押し出す
というより、そこで歌うという感じで表情を良く出します。
他にも5種類ほどWEワイヤーを聴きましたが、こういう風格を持っているのは、今のところ
このワイヤーだけでした。
少し帯域が狭いような気もしますが良いワイヤーです。

2. WE 20GA エナメル-シルク 蝋含浸 1940年代 
もう一つ、WEのワイヤーで好感が持てたのがこのワイヤーです。
24GAのような風格は影をひそめますが、その分ワイドレンジで音抜けの良いワイヤーです。
24GAは長さを長くすると、少し癖が出てきますが、この20AGWは、比較的長くしても癖が
出にくいワイヤーです。
このワイヤーでRCAラインケーブルを作っても良いかも知れません。

BELDEN 22AGW コットン 1940年代
このBELDENワイヤーは、非常にバランスがよく、整った音を出してくれます。
ただ、音の伸びやかさ、とか抜けのよさ、みたいなものは少なく、一辺倒で魅力に欠ける
点があります。
ヴィンテージワイヤーにあっては、今のところ癖のないワイヤーの一番です。



-----------コラム----------
アンプ作りというのは、実に地道な努力の積み重ねです。ワイヤー1本にしてもこれだけ
変化するのですから、一台のアンプを製作する場合、音を決める選択肢は無限の組み合わせ
が出てくるわけです。それを一つ一つ、確認しながら完成度が上がって行くものだと私は
考えます。
一度組み立てたらそれで終わり、ではあまりにもったいないです。