マイク用プリアンプ -実験用アンプの制作 ゲイン違いの謎について-

前回、動作は正常なのにゲインが違う?というところで終わりましたので、今回は、その原因についてです。
 
結果から話せば、真空管のバラつきということなのですが、当初、新品の真空管Gmがここまでバラついて違っているとは思いませんでしたので、その上、アクシデントもあり原因究明に少々時間がかかってしまいました。(最初に挿した真空管が元箱なしのRSD製というのがまずかった)
 
順を追って話を勧めますと、当初、ゲインがLchは25に対してRchは16、ということで原因を探っていたのですが、やはり配線などに間違いは見当たらなく、原因は真空管ほぼ間違いないであろうということでECC84を確認すると、ゲインの低いECC84のボトムにクラックが走っているのを見つけました。ゲッターが減っている気配はありませんが、わずかずつ空気球になりつつあることは間違いありません。

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クラックが入ったRSD ECC84。

ボトムにクラックが入ることは、SIEMENSTelefunken真空管でも起こることですので珍しい事ではなく、原因はこの為か、と一旦は納得したのです。

 

そこで、新しいRSDのECC84を取り出し交換をしようとしたのですが、全体にピンが内側に曲がっていましたので、ピン矯正器に差し込んだところボトムどころか、真空管全体が割れてしまいました。(幸い怪我はありませんでしたが、びっくりしました)良く観察すると、このRSD製、ガラスが薄い。これは慎重に扱わないと、ちょっと硬いソケットに差し込んだだけでクラックが入りそうです。

 

改めて、もう1本新しいECC84を取り出してきて、念のため、今度はピンを一本一本ペンチで垂直に直して、慎重にソケットに差し込みました。半日ほどヒーターの焼き入れをして、ゲインを計ったところ、今度はなんと55近くあります。目を疑いましたが、何度、確認しても55です。もちろん、出力波形に異常は見られません。こうなると一瞬、何が起きているのか分からなくなります。

 
念のため、各電圧電流値を計りましたが、左右で(ゲイン25と55で)大きな違いはありません。冷静に考えると、カスコード回路のゲインはGmに依存しますので、Gmが異なっているということになります。しかし、ここまでバラつきが出るものなのか、どうにも納得がゆきません。
 
そこで、手持ちのRSDのECC84、5本と、その他のメーカーのECC84 4本を測定してみました。

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それぞれ、ヒーターの焼き入れに一日づつ費やしましたので、少々時間がかかりましたが、結果は以下のようになりました。
 
RSD 25が2本、55が2本、30が1本。
Valvo 2本と、Amperex 2本は全て50。(無作為に取り出したもの)
 
どうも、私が入手したRSD製は、Gmの管理がされていないか、または、選別ではじかれたモノ?かもしれません。(新品ということでしたが、元箱もありませんでしたので、はじかれたものかな?)


因みに、ゲイン25の球をチューブテスターで検査しましたところ、破棄値30に対して56でしたので、数値的には問題ないということになります。

 
さて、すっきりしたところで、次のステップに進みたいと思います。