フルレンジスピーカーのための真空管アンプの設計と製作、その10

残留ノイズの検討もそろそろ終盤に入ってきました。

前回、ハムノイズの流入を防ぐ対策として、以下の2点を挙げたわけですが、

1.下側管にバイパスコンデンサーを入れて交流的にフィラメントを接地する。
2.電源トランスの低電圧電源用の巻線に発生するハムノイズを低減する。

まずは、バイパスコンデンサーから検討することにしました。
早速、カスコード回路の下側管にバイパスコンデンサーを入れて、残留ノイズを確認
してみます。

結果は、見事に残留ノイズが低減します。

ただ、残留ノイズは低減しましたが一つこの状態で心配なことがあります。それは、
バイパスコンデンサーを入れたことでゲイン(増幅度)が上がる点です。
現状、出力波形が崩れない入力レベルがギリギリ2Vであることは以前申しましたが、ゲインが
上がるとその分入力感度が上がり、出力波形が崩れる入力レベルが下がってしまいます。
その場合、CDの入力では波形が歪む結果となります。
実際に、入力にサイン波を入れて出力を確認してみますと、2Vの入力では完全に波形上側が
つぶれて歪んだ出力波形となってしまいます。

バイパスコンデンサーを入れる場合は、真空管の動作ポイントを現状よりずらして、入力2Vの
ときの出力波形が歪まない動作ポイントを探さなければなりません。
或いは、現在、出力にあるボリュームを入力側へ移動して(または、入力に新たなアッテネーター
を追加して)、入力に過大な信号が入らないようにする必要があります。


次は、電源トランスの低電圧電源用の巻線にハムノイズが流入しないように、電源トランスの
ノイズ対策をするわけですが、こちらは、トランス製作者のD氏にお願いしました。
基本的には、電源トランスのプライマリーとセカンダリーの間のシールドを強化して
セカンダリーへハムノイズが漏れないようにします。

数日で、改良された電源トランスが出来上がってきましたので、早速、交換して確認しました。
結果は、なかなか良好で残留ノイズが50%~70%ほど改善しています。
それでも、巻線によってハムノイズに差が出ています。電源トランスの低ノイズ化は、結構
難しそうです。

D氏には、さらなる低ノイズの電源トランスの開発をお願いしていますが、電源トランスの改善で
残留ノイズが減少できれば、ノイズの元がなくなるわけですから、それが一番良い方法です。


長々と残留ノイズ対策について述べてきましたが、ある程度目処が立ちましたので、次回は
直熱三極管によるカスコード型ラインアンプの音についてお伝えします。



---------コラム---------
ハムノイズ、ハムノイズは電源または電源トランスから流入するノイズで、商用電源の周波数
50Hz(または60Hz)と場合によってはその倍数の周波数で増幅回路内に流入(混入)します。

残留ノイズ、残留ノイズは、入力信号がない状態(ボリュームがある場合はボリューム位置を
最大にした状態)で出力に現れるノイズです。ハムノイズも出力に現れれば残留ノイズの一部
となります。