フルレンジスピーカーのための真空管アンプの設計と製作、その11

今日は、カスコード型ラインアンプの音についてお伝えします。

まだ色々と問題もありますが、ようやくドイツPOST Tube を利用したカスコード型ラインアンプも
形になってきましたので、聴感上の残留ノイズの確認も含め、音についても確認をしたいと思います。

アンプの状態ですが、音源はCDプレーヤーを対象としていますので、残留ノイズは増えますが入力
感度の観点からハムノイズ対策のバイパスコンデンサーは外した状態で音を確認します。それでも、
電源トランスは改良型となっていますので、残留ノイズはかなり低減された状態です。

確認に使用したフルレンジユニットは旧東ドイツの25cmユニット VEB LEIPZIG L2459PT で、主に
可搬型映写機のスピーカーとして使用されていたものです。 このユニットを平面バッフルに取り
付けたものを確認用のスピーカーシステムとしています。


さて、CDを聴く前にまずは残留ノイズが聴感上どの程度聴こえるか確認してみます。
やはりフルボリュームでは、まだ、かなり気になるレベルです。フルボリューム状態で音楽を聴く
ことはないと思いますが、もう少し残留ノイズを減らしたいところです。

いよいよCDの再生です。最初のCDは、比較的録音レベルの高いマライア・キャリーの1'sを聞いて
みます。このCDを選んだ理由は、入力レベルが2Vを越えたあたりから出力波形が歪んでいました
ので、実際の音楽ソースで歪み感があるのかどうか確認したかったのです。
とりあえず、このCDでは歪み感を感じませんでしたので、この録音レベルのソースでは問題は
なさそうです。残留ノイズも、このCDではボリューム位置が10時程度までで十分でしたので特に
気になりません。

さて、肝心の音ですが確認をしながら感じたことは、今まで聴いていたイメージとは全然違う音と
いうことです。何しろマライア・キャリーの高域が軽く抜け切る感じはなんとも気持ちが良いのです。
それに加え余裕のある雰囲気を漂わせるリアリティー。こういう音を出すラインアンプはとても
貴重です。まだ、音質検討は何もしていない状態でですので素質十分です。

次はクラシック音楽ショスタコービッチのシンフォニーNo5 を聴いてみます。
やはり、クラシックではボリューム位置が1時程度まで上がりますので、無音時の残留ノイズが
気になります。やはり残留ノイズは引き続き検討する必要があります。

クラシックを聴いてもイメージは変わりません。やはりバイオリンなどの抜けの良さは格別です。
その上、各楽器が明瞭で滲まない点も特筆です。低域の分解能力も十分です。
クラシックをこれほど楽しく聴かせるのは珍しいといえます。

まだまだ道のりは長いですが、ドイツPOST Tube を利用したカスコード型ラインアンプ、先が楽し
みなアンプです。

次回からは、この試作アンプからさらに発展させたラインアンプを紹介する予定です。



---------コラム---------
聴感上の残留ノイズについて。聴感上の残留ノイズは、組み合わせるパワーアンプのゲイン
(増幅度)と使用するスピーカーの能率によって変わってきます。パワーアンプのゲインが
大きければ、その分、ラインアンプから出力された残留ノイズを増幅してスピーカーへ送り
込むことになります。また、スピーカーの能率が高いと僅かな残留ノイズでも大きく再生し
てしまうことになります。反対に同じ残留ノイズのレベルでもスピーカーの能率が低ければ、
残留ノイズに気が付かないこともあります。
ヴィンテージのフルレンジスピーカー、特に私の好きなドイツのヴィンテージのフルレンジ
スピーカーは能率が高いものが多いですから(95dB~100dB)、残留ノイズには十分な注意が
必要となってきます。