フルレンジスピーカーのための真空管アンプの設計と製作、その18

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上図は、「無線と実験」1988年8月号の政田晴彦氏の記事より抜粋


今日も残留ノイズ対策についてお伝えしようと思ったのですが、その前に、もう一つの問題点であった
最大入力電圧の問題の検討についてお伝えすることにしました。
なぜなら、残留ノイズを無くすにはカスコード回路下側管のバイアス抵抗にバイパスコンデンサーを入
れるしかありません。
しかし、バイパスコンデンサーを入れるとゲインが上がり、最大入力はさらに低くなってしまいます。
結局、最大入力の問題について解答を出さないと、残留ノイズの問題も結論が出なくなってしまいます。

まずはBa-EC88カスコード回路の動作ポイントを変化させて、最大入力レベルが改善されるかどうか検討
してみます。

まずは、負荷抵抗(R5)を変化させて最大入力の変化を見てみます。但し、ここで問題になってくる点は、
負荷抵抗を大きくすると出力インピーダンスも大きくなってしまうので、プリアンプの性能を考えると
あまり大きな数値は選択できません。また、この負荷抵抗は分割抵抗の内側に組み込まれていますので、
負荷抵抗での電圧降下を考慮しなければなりません。
以上の点を考慮すれば、最大でも30kΩ程度が限度です。実際に、33kΩの抵抗に変更してみますと、僅か
に変化しますが大きく改善することはありません。

次に、分割抵抗(R7,R8)の比率を変化させて、もう少し下側管の動作に余裕を持たせてみることにしました。
しかし、これも変化は僅かで、大きく改善することはありません。

次に、バイアス電圧を変化させて、動作ポイントを変化させて見ます。ただし、バイアス電圧を変化させ
るとプレート電流お変化しますので、あまり大きくは変化させられません。
実際にバイアス抵抗(R6)を変化させて見ます。こちらは変化があります。
バイアス電圧を低くすると、最大入力電圧は増える方向へ変化します。

次に、+B電源の電圧を増やして、変化を見てみます。ただし、真空管の最大電圧が制限されていますので
50V程度が限度です。 実際に電源電圧を50V程上げてみましたが、残念ながら大きな変化はありません。

以上のように、バイアス電圧を調整することである程度の改善が見込まれることが分かりましたので、
もう少し詳しく調べるために、セルフバイアスからフィクスバイアスへ変更してバイアス抵抗を自由に
設定できるように改造することにしました。

フィクスバイアスへ変更するには、新たに低電圧電源を2個追加しなければなりません。
今回は、定電圧ICではなくディスクリートで定電圧電源を組んでみることにしました。電源の違いが音
に現れるのかどうか興味深いところです。